石英 quartz  SiO2  [戻る

六方晶系 一軸性(+) ω=1.544 ε=1.553 ω-ε=0.009 

色・多色性/無色で,多色性なし。

へき開認められない。

形態自形〜半自形のものは丸みのある粒状(自形の6角両錐体)で流紋岩中に見られ,それ以外では大抵は他形。

消光角通常の岩石中では伸長した自形のものはなく,へき開や双晶などもあまり認められないので,定義されない。ただし,石英脈やめのうを構成する石英は1方向に伸長している場合があり,直消光が認められる。

双晶ブラジル式双晶・ドフィネー式双晶が普通にあるが,それらはC軸を共有した双晶なので,双晶ドメイン相互の光学的方位は同一であり,その双晶の存在は偏光顕微鏡下では認められない。熱水脈には日本式双晶がまれに認められ,クロスニコルで直線的な双晶境界が見られる。

累帯構造組成変化に乏しく認められない。

産状珪長質の火成岩,泥岩・砂岩・礫岩・チャート,各種変成岩など

・火成岩中のものは高温型石英から低温型石英に相転移したものである。

・クロスニコルでは1つの粒子内で漸移的に消光する場合が少なくない。これを波動消光といい,特に圧力を受けてできた広域変成岩中の石英に非常によく見られる。これはゆっくりとした圧力による原子配列のすべりにより,単結晶であったものが,互いにわずかに結晶方位の異なる多結晶集合体に変化したものである。時代の古い圧力を受けた砂岩中の石英粒子にも波動消光を示すものが多い。火成岩では花崗岩のような深成岩中の石英に波動消光を示すものがしばしば見られるが,圧力のあまりかからない火山岩中の石英には波動消光を示すものが比較的少ない。同じく圧力のかからない浅所で形成された浅熱水鉱脈中の石英もあまり波動消光を示さない。

・古生代以前の古い堆積岩中の石英粒子は続成作用が進む過程でオーバーグロースにより成長し,それらの石英粒子の境界は縫合状になっている場合がある。



流紋岩中の石英(Qz)
溶岩中の自形の6角両錐体(自形の高温型石英の結晶形態)の断面。石基中に丸みのある粒状をなす。低圧条件の岩石では波動消光を示すものは比較的少ない。



流紋岩(流紋岩質火砕岩)中の石英 
Qz:石英,Af:アルカリ長石,Pl:斜長石,Bt:黒雲母

火砕岩としての流紋岩中の石英は火山爆発で砕かれ,破片状になったものが多い。長石類などの他の造岩鉱物も同様に破砕された粒子が多い。石基部分は高温で溶結した火山灰。



花こう岩中の石英
Qz:石英,Af:アルカリ長石,Pl:斜長石
他鉱物の隙間を埋めるような他形をなす。地下深部の圧力で波動消光を示すものも多い。



古生代以前の砂岩中の石英 (クロスニコル)
円磨された砂粒で,続成作用の過程で部分的にオーバーグロース(石英の砂粒が成長)し,石英同士の粒界は縫合組織になっている。
この画像(左)のように,時代の古い砂岩中の石英は堆積後の圧力で,波動消光が著しくなっている。



ミルメカイト組織(微文象組織)をなす石英と斜長石 (クロスニコル)
かなり分化の進んだ花こう岩中のアルカリ長石と斜長石との境に見られることが多く,石英と斜長石が虫喰いのように複雑に入り組んだように共生している組織。2種以上の鉱物がマグマから一緒にできる共融組織の一種。



緑色片岩中の石英
Qz:石英,Chl:緑泥石,Ac:アクチノ閃石,Ep:緑れん石
原岩の海洋底玄武岩に石英は含まれないが,変成作用での再結晶化の過程で変成鉱物としての石英が生じる。しばしば共生する曹長石(アルバイト双晶などは少なく,単晶で石英と紛らわしい)とは,石英が波動消光が著しく,かつ,アイソジャイアーで1軸性なので区別できる(広域変成岩中の石英はこのように圧力により波動消光するようになったものが多い)。



浅熱水成金銀石英脈に見られるゲル状ケイ酸分から結晶化した乳白色緻密な石英 (クロスニコル)
浅熱水成金銀石英脈を形成する約250℃以下の低温の熱水には,ケイ酸はイオン以外にコロイドとしても溶けている。そのケイ酸コロイドからの沈殿物は初めは非晶質のゲル状ケイ酸で,その後,それは石英に結晶化する。上画像はそのゲル状ケイ酸が結晶化した石英で,微細な集合体で,個々の結晶方位はまちまちである。
また,ゲル状ケイ酸が石英に結晶化する際は脱水作用などで体積が収縮するため,このような石英には多孔質組織が見られることも多い。
なお,石英に結晶化する前のゲル状ケイ酸は未固結のスライム状で可塑性があり,重力・熱水の力・構造運動で,上画像の中央の縞のように曲がりくねったスランプ構造になったり,断裂構造を示すことも多い。
なお,この元のゲル状ケイ酸が固化して緻密な石英に結晶化する際は,含まれていたカリウム分やアルミニウム分が微細な菱形の氷長石となって石英中に析出することもある。



安山岩中の空隙に熱水から沈殿したケイ酸ゲルから結晶化した石英の針状結晶集合体(玉髄・めのう)
Qz:石英,Sm:スメクタイト,And:安山岩
個々の結晶は直消光し,多くはa軸方向に伸びているため,伸長は負のことが多い。